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柴田元幸責任編集。
ときどきぱらぱらと読みたくなる、良質な文芸誌。巻頭の柴田元幸のエッセイからしていいし、この号だと吉野朔実のエッセイ「永遠のクリストファー・ロビン」と小川洋子の短編「物理の館物語」が好き。
Essay:柴田元幸 スチュアート・ダイベックと京浜工業地帯を歩く 絵=きたむらさとし
Poetry:三角みづ紀 ファントムペイン
Essay:レベッカ・ブラウン 時代の子供 訳=柴田元幸
Kids!好きな男の子・女の子――『モンキービジネス』からの質問
浅尾大輔/戌井昭人/岩松了/喜多村紀/リン・ディン/長嶋有/野中柊/ロジャー・パルバース/藤本和子/穂村弘/吉野朔実
テッド・グーセン 不思議な子供たち 訳=森慎一郎
この号の執筆者:
210mm×148mm/207p
約10年の間に日本百名山完登(うち88座は単独行)した著者による山行記。もうデータとして古いので、ガイドブックとしての価値があるかというとあまりない本ですが、なんだか味わいがあって好きな一冊。あまり単独行はすすめられたものではないし、著者も前書きで「うしろめたさを感じている」と述べている。私も一人で山歩きをするときにはそんな感じ。不安なく歩いているときには、計画変更も自由で、歩きながらとりとめもない考えごとをしたりできていいなと思う。
寝袋の中で目をつぶる。多分、平ガ岳を中心にして半径数キロの範囲に、人間はだれもいないのではないかと想像する。地球に間借りしている自分、を考える。(本文より)
繰り返すようだけど、単独行はあんまりすすめられたものではない。でもやっぱり時々は「自然と自分」という組み合わせの中で独り居を楽しむ時間もいいのですよね。百名山とは言わずとも、近所の緑ゆたかな公園に”単独行”、水筒にコーヒーでもつめていけばそれも冒険だと思うのです。
210mm×148mm/254p
歌舞伎と西洋演劇を比較研究する著者による、おいしいものにまつわるエッセイいろいろ。北欧のディルの話から、中国の珍しい食材の話、ドイツオクトーバーフェストの話、逗子のおいしい地魚の話、プロの料理人から教えてもらったおいしそうないただき方、タイトルにあるとおり料理に関する道具についても書かれた項も多くあります。四季折々、古今東西の食べもの(とお酒)の話のおいしそうなこと。挿画も著者によるもの。
小人閑居して……酒食をなす、か。とにかく空前のしあわせ。(本文より)
夜中に読むといけません。お刺身と日本酒が恋しくなってしまいます。私はこれを読んで、ぜったいに次の夏には日本酒をはんぶん凍らせて、みぞれ酒にし、しゃりしゃりいったところを、夕暮れに水打ちして涼しくなってきたところにちびちびのみたいと思います。水茄子漬けでもあったら最高だなあ。
四六判/232p
生きる権利があることは、死ぬ権利もあるということ?そんな問いが突きつけられます。この本の「著者」ヴァンサンは、交通事故にあい、全身麻痺となる。意識ははっきりしていて、ほんのすこしだけ動かすことができる指先によってのみ、意志を伝えることができる。そのわずかなコミュニケーションによる「聞き書き」で生まれた本。
人が生きるとはどういうことなのか。夢を断たれ、体は動かず、一人では生きていくことができず、生きていることに意味が見いだせるのか。生きていくのに希望が必要なのだとしたら、ここに希望が見いだせるのか。神様は乗り越えられない試練は与えない、と言われる。ならばこの状態は乗り越えられる試練なのか。そして、希望のない生を、こちら側の世界につなぎとめておくことは、「私はいいことをしている」と思いたいだけじゃないのか。ただ「居る」ことが生きることであってよいのだろうか。
疑問も考えることもつきない一冊。遠い物語ではない。医療の進歩はすばらしいことだ。けれどもその裏側に、何人ものヴァンサンがいることだろう。軽々しく死を口にすることができなくなる。
山本知子/訳
195mm x 135mm / 205p
瓶のかたちが好きでついつい香水が欲しくなってしまう、というのは私だけではないはず。昔の香水瓶ってまたいいかたちなのです。ページを繰るだけでも楽しい一冊。原料になる花についての説明に、花言葉までついていてちょっとロマンチック。調香の説明はいまでもたのしく読むことができます。……とかいって、まあ、カラーブックスの魅力は昭和のワクワク感につきます。子どものころに「これはおとなの本なのよ」といわれてくやしい思いをしたけれど、今なら読めちゃう、懐かしさと優越感がまじったかんじがよいのです。味わいたい方、ぜひどうぞ。
150mm×110mm、153p
副題は「"新宿の殺し屋"と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯」
真剣師ということばを知ったのは、最近のこと。実は「ハチワンダイバー」からです。賭け将棋をするひとのことなんですね。
賭け事はやらないし、将棋もコマの進め方を知っている程度なのに、この本はおもしろい。
どちらか、あるいは両方やる人にはもっとおもしろいのではないか、と思うとちょっとうらやましい気もします。
まわりにいる人はたまったもんじゃないのでしょうが、読んでいるとどうしても憎めない。大酒飲みだし、女癖は悪いし、将棋は強くてもプロでなくてギャンブラー。ダメ男もいいところ。なのですが、こういう人のことを書いた本が好きでついつい手が伸びてしまいます。
最後に小池重明の遺書が載っています。この後に及んで酒のことや競輪のことを言うなんて!と思うけど泣けてしょうがない。それまでの団鬼六の文章はさすがだなと思います。
四六判、318p
かっこいい!のひとこと。市川崑の妻として、また、ほとんどの市川作品の脚本を手がけた同志。
注釈なしに読んだのだから、全く分からないだらけだけれど、注釈つきのを読んでみたらと云ってくれる人もあるけどね、たとえば「論語」ね、色んな注釈あるでしょ、あれこれ照合して読んでみたのね、結局は読む人の好みなのね。だからね、分かっても分からなくても、自分で読んで、自分で感じるのがいいんぢゃないかって、そう思って、中、下、と読むつもり。また書くわね。(『葉隠』上を読み終わった より)
将来のことを質問してくる若者の便りにたいして、「書いた人は質問のつもりなのでしょうが、答える人は誰もいないということ。(中略)自分の意思と、自分の努力、それだけが解答です」とばっさり。気持ちがいい。この人自身がそうして自分で考えて感じてきりひらいてきたから言えることなんだろう。自分の未来に迷うとき、思い出したいことば。というよりも、これからの毎日、問いたいことば。(それは自分で読んで、自分で感じていることなのか?)と。
四六判、323p
後半のはじまりは終戦から。自分の過去を「こんがらがった針金の玉のよう」と書き、それを否定するわけでも卑下するわけでもなく「自分という人間が生きた日々を、なんとかして『意義会った日々と思い、納得のいく歴史にしたい』」と、真っ向に組んで生きる女性。ただ美しい人なんていないのだな。美しくなるべくしてなっているのだと思います。このつよさ、凛とした姿勢が美しさになっているのだと。
「わたしの渡世日記」は高峰個人の日記にとどまらず、日本女性全体の渡世日記のような気がする。後半の地位名声が確立した時代に至っても決してそれに溺れていない。女優の虚名に閉口して反撥し反省し生活も質実できらびやかな事は大嫌いだ。そういう彼女の性格はこの一篇にあますところなく描かれている。正直といってこれほど正直な描写はない。(川口松太郎による帯より)
四六判、360p
引退後に書かれた高峰秀子の女優人生の思い出。(これを書いた時点では、人生のうちで女優でなかったのはほんの数年だけだったなんて!)
多忙だった子役時代の生活、母とのエピソード、戦争の時代の仕事、数々の映画人とのかかわり、スキャンダル。
のびのびとした明るい口調で書かれていはいるけれど、内容はきびしくはげしい。
これが昭和の女優の芯のつよさ、おくゆかしさというものなのだな、と思いました。
学校へゆかなくても人生の勉強はできる。私の周りには、善いもの、悪いもの、美しいもの、醜いもの、なにからなにまで揃っている。そのすべてが、今日から私の教科書だ(本文より)
学校をやめたときの彼女の胸のうち。まだ10代にして家族をしょってたつ。
四六判。346p
店主思い入れたっぷりの、「世界のメルヘン」の第6集です。表題作「銀のうまと木馬たち」はクリスマスのおはなし。読んでいるうち、ちいさな私はいつだって木馬たちと雪の中をかけていたんでした。
「トムは真夜中の庭で」などが代表作のフィリパ・ピアスの、こちらもまた子ども夜のおはなし「夜のよなかに」。読めばおなかがすくことうけあいです。とてもたのしい処世術も教えてくれます。生活感があるというか、描写が適当でなくてちゃんとリアリティがある。だからわくわく読み進められたんだなあ、と今ごろになって感心。
さいごのアリスン・アトリーの「メリーゴーラウンド」も幻想的。挿絵もひきこまれます。文中の「おとなになると、ものを本気でしんじるってことが、なくなっちゃうんだもの」という少年のことばにどきり。
タテ283mm×ヨコ224mm 113p


季節ごとに、テーマを決めて本を紹介していこうと思います。まだ準備中です。

オンラインの古本屋です。
まだ殺風景なデザインのところもありますが、引っ越してきたばかりの部屋にお気に入りの家具をそろえてゆくように、すこしずつ手を入れてゆこうと思っています。
なにげない日々の暮らしについてのことを瑞々しく書き記した本、
子どものために書かれた本、
などを中心に、
のんびりと本を楽しめるお店になれますように。
どうぞよろしくお願いします。
[古森熊書房] 書籍商:東京都公安委員会許可 第302160709326号 永田美和